日本のPM2.5対策


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日本のPM2.5対策

今や、PM2.5は国民の健康を脅かす問題として、国による対策も検討されています。しかし、実際のところPM2.5というのは新しく登場した物質というわけではなく、日本でも以前から問題になっていた公害のひとつでもあります。日本ではこれまでPM2.5に対してどのような対策をとってきたのでしょうか。

高度産業成長期の公害

高度産業成長期の公害 日本では、1960年代~1970年代にかけて高度経済成長期と呼ばれる時代がありました。実質経済成長率は年間10%を超え、どんどん工場を建ててモノを作っては売り、国民の所得は増え、生活も豊かになりました。しかし、その反動として1970年代に大きな問題となったのが公害です。水俣病、イタイイタイ病など水源への公害も大きな問題となりましたが、三重県四日市市の大気汚染は四日市ぜんそくを引き起こす公害として全国に知れ渡りました。その後、公害による健康被害を受けた人々が企業や国を相手に訴訟を起こし、それが勝訴となったことなどが引き金となり、産業界でも公害や環境に対する意識の改革が起こったと言われています。1973年には公害による損害賠償の内容を定めた公害健康被害補償法が制定されるなど、公害対策が行なわれるようになりました。こういった時期にはPM2.5という名前はまだ一般的に言われていませんでしたが、当時の大気汚染物質の中にも当然PM2.5が多く含まれていたと考えられます。


徐々に減少する公害

とはいえ、工場の設備を一気に一新することは困難であり、明確に違法な廃棄をしていない場合などは特に急に公害を減らすということは難しく、公害を減少させる取り組みが始まったとはいえすぐに公害が無くなるものではありません。実際それ以降も光化学スモッグなどは各地で観測されており、現在でも中高年の人であれば光化学スモック注意報の放送などを耳にしたことを覚えているのではないでしょうか。それでも、日本では環境に対する国民の意識の高まりと、企業努力により徐々に公害は減少し、高度成長期に問題になっていた硫黄酸化物や一酸化炭素による大気汚染はかなり改善されたと言ってよいでしょう。

現在の日本の公害

WikipediaよりWikipediaより

現在、日本の公害として問題となっているのは、車の排気ガスなどによる窒素酸化物や、光化学オキシダントなどです。少なくなってきているとはいえ、日本の工場からも全く公害の原因となるものが排出されていないわけでなく、こうした排気ガスをより減少していくための企業努力は必要になりますし、国民がそれに注意を払い続けることも大切です。

また、車の排気ガスにはPM2.5も多く含まれており、都市部の環境を悪化させる要因として問題となっています。特にディーゼル車からはかなりの量のPM2.5が排出されることから、ディーゼル車自体も規制される方向であり、ガソリンを使わない電気自動車に補助金を支給するなど、車の排気ガス減少の努力が続けられています。工場の排気ガスなどはなかなか個人レベルではどうしようもない問題ですが、自動車の排気ガスは国民一人一人の行動でかなり減らすことが可能です。まだまだ電気自動車やハイブリッドカーは普通の自動車に比べて割高であるため購入に踏み切れないという人も多いですが、こうした車の普及率は確実に高まりつつあります。国や企業にはこういった電気自動車やハイブリッドカーがより普及するようなインフラ作りや技術革新、低価格化の実現などが求められます。

その他タバコの煙、特に副流煙にも多くのPM2.5が含まれており、身近な大気汚染として取り上げられることも多くなっています。こうした周囲への健康被害が知られるようになったり、タバコ自体が値上げされることが多くなったりしたことで、国民の喫煙率は徐々に下がっていますが、先進国の中ではまだタバコに対する意識は低いと言えそうです。個人ができる環境対策の一つとして、タバコの煙を減らすことは今後さらに重要になってくるのではないでしょうか。

他国からのPM2.5対策

現在、特に問題となっているのが、中国から飛来するPM2.5です。中国では以前の日本のように工場から排出される有毒ガスや、暖房用に焚く石炭などの影響で急激な大気汚染が進んでおり社会問題となっています。そうした成分が偏西風に乗って日本にも被災するため、日本のPM2.5も増えつつあるのです。日本では、国内のPM2.5の発生を減らすだけではなく、中国の大気汚染の改善をサポートすることで環境の改善を目指しています。ただし、現在日中関係が悪化していることなどから中国としても日本の協力を受け入れまいとする動きも強く、なかなかスムーズに進まないのが現状です。とはいえ、中国の国民や企業の中にも現在の大気汚染を解消したいという声は高まっており、民間レベルで日本の技術を取り入れて公害の解消に取り組む動きはあります。日本では国家レベルでの協力を呼び掛けると共に、民間でも公害を減少させるための技術を紹介していくなどして中国のPM2.5を減らしていくことが必要になってきています。